ABOUT

ガラスの器を作っています。

器に描かれる植物モティーフは筆で描いたものではなく、
まず、
小さなバーナーの火の中でガラス棒をあぶりながら細工し、
細いガラスの茎の先に裏表がある立体的なガラスの花や葉を作ります。
このガラスパーツが器ひとつに必要な量が作り溜まったら、
器本体となるガラス生地に配置し、焼成します。

小さな豆皿であっても少なくとも3回から4回、
多いものになると、5回から6回の焼成を繰り返し、
ひとつの器が完成します。

複数のガラス技法の組み合わせと、
手間暇を惜しまない独自の作業工程を経て、
他には類のない独特な個性と世界観を持つ器が完成します。

●制作のコンセプトーーーーーーーーーーーーーーーーーー

僕が生まれ育った家の庭には
山からおりて湧く
きれいな水が流れる小さな水路がありました

サワガニ•ヤモリ•トンボの幼虫
夏にはホタルも飛ぶ程のきれいな水が流れていました

子供の頃なのですが
不意に独りで留守番をさせられる事がありました

いつもは兄弟で賑やかな家も
独りでいると広く暗く静かで落ち着きません

そんな時はいつも庭に出て
水路の流れを小石や土でせき止めて
水溜りを作り
庭に咲いている花や葉を沈め
「水中植物園」を作るのです

しばらくすると水中植物園は完成するのですが
その小さな水溜りに沈んでいる花や葉は
静かに流れに揺れ
光の反射が水に映り
そのまた反射が花や葉にも映り
すべてが揺れながら
きらきらと輝きとてもきれいでした

小さな子供の僕にとって、その中で起こる様々な現象は
誰も知らない自分だけの大発見でした

体を丸めて水の中を無心になって見入っていると
時はあっという間に過ぎ
母はおつかいからもどり
僕の独りの留守番は終わるのです

小さな時のかすかな記憶ではありますが
時が経つにつれ、色鮮やかになっていくのは不思議なものです

そんな子供の時の思い出の延長線上で制作をしています


●経歴
1971年 静岡県浜松市生まれ
1999年 東京ガラス工芸研究所 基礎科 卒業
1999年 財)金沢卯辰山工芸工房 入所
2001年 財)金沢卯辰山工芸工房 修了
2009年 兵庫県姫路市にて工房開設